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発注者側の施工管理とは|監督・発注者支援の仕事と年収・残業を元請と比べた

セコカン転職マップ編集部

発注者側の施工管理とは|監督・発注者支援の仕事と年収・残業を元請と比べた

この記事には広告(PR)が含まれることがあります。掲載している数字・内容は、広告の有無に関係なく公的データや公表資料をもとにしています。

発注者側の施工管理は、工事を「する側」ではなく「発注した側」として、契約どおりに工事が進んでいるかを確かめる仕事です。国の工事では、会計法第29条の11で、契約の適正な履行を確保するために発注者が監督をすることが決められています。工程を取り戻すための土曜出勤は施工者の仕事なので、元請とは忙しくなる理由が違います。

年収と残業については、発注者側だけをまとめた公的な統計は見当たりません。そこでこの記事では、元請の施工管理の公的データを物差しにして、発注者側の勤め先ごとに何を確かめればよいかを書きます。

発注者側と元請は、立場がどう違うか

工事には、発注者・元請・専門工事会社の3者がいます。発注者側の施工管理が立つのは、この中で一番上の発注者の立場です。発注者の人手が足りない場合は、発注者支援の会社やCM会社が発注者の側に立って補助します。

発注者側 国・自治体・デベロッパー・事業会社 契約・監督・検査・設計変更の協議 発注者支援の会社 CM会社 発注者を補助する 工事の請負契約・監督 元請(ゼネコンなど) 工程・品質・安全・原価を管理して施工 専門工事会社(設備・躯体など)
図: 発注者側は「工事をさせる側」。発注者支援やCMは発注者の横で補助する

元請の施工管理は、自社が請け負った工事を工程・品質・安全・原価の4つで管理します。発注者側は、その管理がきちんと行われて、契約どおりのものができているかを確かめる側です。同じ現場に立っていても、責任を持つ範囲が違います。

国の工事では、会計法第29条の11が発注者に監督と検査を求めています。自治体の工事では地方自治法第234条の2に同じ趣旨の決まりがあります。発注者側の施工管理の仕事は、この監督と検査を実際に行うことです。

出典: e-Gov法令検索「会計法」第29条の11 リンク/「地方自治法」第234条の2 リンク

仕事の中身を、元請と並べて比べる

工程・品質・安全・原価・書類の5つで、発注者側と元請がそれぞれ何をするかを並べると次のようになります。

項目発注者側がすること元請がすること
工程工程表を受け取り、遅れの理由と取り戻し方を確かめる工程表を作り、職人の手配と作業の順番で守る
品質設計図書どおりか、施工状況を照合し検査に立ち会う施工計画書を作り、自主検査と是正をする
安全安全対策が計画どおりかを確かめる朝礼・KY・安全書類で現場の安全を管理する
原価・金額工事費の積算、設計変更の金額の協議実行予算を組み、原価を管理する
書類・協議契約の書類、地元や関係機関との協議の資料施工体制台帳・写真・竣工書類

大きな違いは、元請が「自分で段取りして進める」のに対し、発注者側は「確かめて判断する」ことです。現場で手を動かす段取りが減る分、設計変更の判断や関係機関との協議など、決める仕事が増えます。

書類の種類も変わります。元請では施工体制台帳、安全書類、工事写真、竣工書類など「施工した証拠」をそろえる書類が中心です。発注者側では、設計変更の理由書、協議の記録、検査の結果など「判断した理由」を残す書類が中心になります。書類が減るわけではなく、書く中身が変わると考えておくと、移った後の差に戸惑いません。

元請での経験は、このまま発注者側で使えます。施工計画書を書いた経験があれば計画書の確認ができますし、工程会議を回した経験があれば遅れの理由を見抜けます。施工の現場を知っていることは、発注者側での一番の武器です。

発注者側で働く場所は大きく4つ

「発注者側」と一口に言っても、雇い主によって立場がかなり違います。主な勤め先は次の4つです。

勤め先立場主な仕事
国・自治体(技術職)発注者そのもの工事の発注・監督・検査、設計変更の決定
発注者支援業務の会社発注者から業務を受けて補助する積算の補助、施工状況の照合、協議資料の作成、検査への臨場
CM会社発注者の代わりにプロジェクト全体を管理する発注方式の提案、設計・施工の調整、コストと工程の管理
デベロッパー・事業会社建物を建てる側の社員事業計画に沿った設計・工事の管理、施工者の選定

出典: 国土交通省近畿地方整備局 和歌山河川国道事務所「工事監督支援業務」積算内訳書 リンク/国土交通省「CM方式の導入実績、建築・土木事業とも増加中」(2024年9月27日) リンク

発注者支援業務は、国土交通省の地方整備局などが民間の会社に委託している業務です。たとえば工事監督支援業務は、監督職員を補助して工事の円滑な履行と品質の確保を図るものです。契約の履行に必要な資料の作成、施工状況の照合、工事検査への臨場などが含まれます。土木の施工管理経験者が移りやすい行き先です。

CM会社は、発注者の代わりに設計から施工までを管理します。国土交通省の2024年の調査では、建築事業でCM方式を使った発注者の約9割が市区町村などの公的機関でした。学校・病院・庁舎などの建築の経験が生きる行き先です。

デベロッパーや事業会社(鉄道・電力・工場を持つメーカーなど)の建設部門は、自社の建物や施設を建てる発注者です。4つの勤め先の違いと移り方は発注者側の施工管理へ転職する道で、デベロッパーに絞った話はデベロッパーへ移る施工管理の条件で詳しく書いています。

役所の技術職は、新卒向けの試験とは別に、社会人の経験者を対象にした採用を行っている国の機関や自治体があります。受験できる年齢や必要な経験年数は試験ごとに違うので、受けたい機関の募集要項を確かめてください。採用されれば発注者そのものになるので、監督・検査に加えて、事業の予算や計画にもかかわります。

どの勤め先が合うかは、今の経験が土木か建築か、公共か民間かでおおよそ決まります。求人の数は時期で変わるので、建設業界の求人を扱う転職エージェントに「発注者側」と条件を伝えて、今出ている求人を見てもらう方法もあります。

年収:公的な統計で言えること、言えないこと

発注者側の施工管理だけをまとめた年収の公的な統計は見当たりません。比べる物差しとして使えるのは、元請を含む施工管理全体の数字です。厚生労働省のjob tagでは、建築施工管理技術者が679.1万円、土木施工管理技術者が625万円でした。

比べる物差しになる施工管理の年収 建築施工管理技術者 679.1万円 土木施工管理技術者 625万円 発注者側だけの年収の公的な統計は見当たらない 役所: 自治体が公表する給与の状況を見る 会社: 求人の提示額を固定残業代抜きで比べる
図: 発注者側の年収は、勤め先ごとに別の資料で確かめる

出典: 厚生労働省 job tag「建築施工管理技術者」 リンク/「土木施工管理技術者」 リンク(令和7年賃金構造基本統計調査を加工した値)

役所の技術職の給与は、各自治体がサイトで職員の給与の状況を公表しています。経験者採用の場合は、前の職歴をどう給与に反映するかの決まりも募集要項に書かれていることが多いので、そこまで読んでおきます。

年収を比べるときは、次の3つをそろえてから並べます。

  • 基本給と固定残業代を分ける(固定残業代を除いた月額で比べる)
  • 賞与が何か月分か、業績で変わるかを確かめる
  • 資格手当・現場手当など、元請で付いていた手当が移った先にもあるかを見る

発注者支援の会社・CM会社・デベロッパーは、会社ごとの差が大きい勤め先です。求人票の提示額を、今の年収と同じ条件(固定残業代を除いた額、賞与の月数)にそろえて比べてください。元請では残業代が年収の一部を占めていることが多く、残業が減ると年収が下がる場合もあります。

残業:工期末の取り戻しはないが、別の忙しさがある

発注者側では、遅れを取り戻すための土曜の立ち会いや、竣工前の是正の追い込みは基本的に施工者の仕事です。その分の残業は元請より少なくなります。一方で、発注者側には発注者側の忙しい時期があります。

忙しくなる時期の違い(公共工事の例) 元請 担当する工事の工期末ごとに山が来る 発注者側 年度末に完成検査と次年度の準備が重なりやすい 4月 9月 3月
図: 元請は工事ごと、発注者側は年度単位で忙しさの波が来る

公共工事は工期末が年度末に集まりやすく、国土交通省が「施工時期の平準化」を自治体に呼びかけているのもそのためです。役所や発注者支援の仕事では、2〜3月に完成検査と次の年度の発注準備が重なることがあります。

発注者側の忙しさを左右するものに、担当する工事の数もあります。元請の施工管理は1つの現場に張り付くことが多いのに対し、発注者側では監督する工事を複数同時に持つ場合もあるからです。現場ごとの段取りは少なくても、協議や書類が並行して進むので、担当件数を面接で聞いておくと働き方を想像しやすくなります。

デベロッパーや事業会社では、年度末より事業のスケジュール(引き渡し日・開業日)で忙しさが決まります。引き渡し前は施工者との調整が増えるので、元請ほどではないにしても忙しい時期はあります。

面接では「一番忙しい月は何月で、その月の残業は何時間くらいか」を聞いてください。平均より山の高さを聞くほうが、移った後の働き方を想像しやすくなります。残業の少ない行き先をほかの選択肢と比べた話は残業が少ない施工管理の職場の比較にあります。

よくある質問

発注者側の施工管理に資格は必要ですか。
勤め先によって違います。発注者支援業務では、地方整備局が担当する技術者に資格や経験の要件を定めていることがあり、施工管理技士などが挙げられる例があります。応募する業務の公告や求人票で要件を確かめてください。
元請の経験は何年あれば発注者側に移れますか。
決まった年数はなく、求人ごとの条件によります。CMの認定資格であるCCMJ(日本CM協会)は3年以上の実務経験があれば受験できるとしており、経験年数の一つの目安になります。
発注者側に移ると現場に出なくなりますか。
監督や検査、施工状況の照合で現場には出ます。ただし作業の段取りや職人の手配をするのは施工者なので、毎日朝礼から現場に張り付く働き方とは変わります。
土木と建築ではどちらが発注者側に移りやすいですか。
公共の土木工事は発注者支援業務の行き先が多く、建築は学校・庁舎などのCMやデベロッパーの行き先があります。どちらが有利とは言えないので、自分の経験に近い発注者を選びます。土木の行き先は土木施工管理の転職先で比べています。

次にやること

  1. 今の経験を「土木か建築か」「公共か民間か」で整理し、近い発注者の勤め先を1つ選ぶ
  2. 今の年収を固定残業代・賞与の月数に分け、求人の提示額と同じ条件で比べられるようにする
  3. 候補の勤め先の「一番忙しい月」と「その月の残業時間」を面接で聞く

セコカン転職マップ編集部

施工管理の働き方と転職について、国土交通省・厚生労働省などの公的データと、求人票・試験団体の公表資料をもとに調べて書いています。数字には出典と年度を付けています。