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施工管理の残業代が出ない?固定残業代(みなし残業)の求人票の読み方

セコカン転職マップ編集部

施工管理の残業代が出ない?固定残業代(みなし残業)の求人票の読み方

この記事には広告(PR)が含まれることがあります。掲載している数字・内容は、広告の有無に関係なく公的データや公表資料をもとにしています。

固定残業代そのものは違法ではありません。ただし厚生労働省は、固定残業代を含めて募集するときは、①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代の時間数と金額、③その時間を超えた残業に割増賃金を追加で支払うこと、の3つを全部書くよう求めています(若者雇用促進法に基づく指針)。設定された時間を超えて働いた分は、別に支払われるのが前提です。

固定残業代は「先払いの残業代」

固定残業代は、名前が「現場手当」「業務手当」でも、一定時間分の残業代を毎月決まった額で払うしくみです。厚生労働省のリーフレットは、名称にかかわらず、一定時間分の時間外・休日・深夜労働に対して定額で払う割増賃金を「固定残業代」と呼んでいます。

例: 月給31.6万円(固定残業代30時間分を含む) 基本給+資格手当 256,000円 固定残業代 60,000円 超えた分は 別に支払い 30時間分 31時間目から 残業が10時間の月でも、6万円は減らない 残業が40時間の月は、10時間分が上乗せ 数字は説明用の例です
図: 固定残業代は、決まった時間までの残業代を前もって払う部分

出典: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」 リンク

働く側から見ると、残業が少ない月でも固定分はもらえます。困るのは、設定時間を超えても追加が出ない場合と、そもそも固定分が時間数に対して安すぎる場合です。この2つは、求人票と給与明細の数字で確かめられます。

同じリーフレットには、残業代をめぐる裁判例も載っています。2012年3月8日の最高裁判決では、基本給に残業代が含まれているとされていても、通常の賃金の部分と割増賃金の部分を分けて見分けられない場合は、割増賃金を払ったことにはならないと判断されました。「月給に残業代込み」とだけ説明され、何時間分でいくらかが分からない形は、この点で問題になり得ます。

出典: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」(参考資料の裁判例) リンク

求人票で見るのは3か所

厚生労働省のリーフレットには、記載例として「基本給(××円)」「□□手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)」「○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」が載っています。求人票では、この3つがそろっているかを見ます。

求人票の給与欄の例(架空) 月給 316,000円〜 内訳: 基本給 240,000円 資格手当 16,000円 業務手当 60,000円 (時間外の有無にかかわらず 30時間分の時間外手当として支給) 30時間を超える時間外労働分は 追加で支給 1 固定分を除いた 基本給があるか 2 時間数と金額が 両方あるか 3 超えた分の 追加支払いがあるか 会社名・金額は説明用の例です
図: 厚労省の記載例にそって、3か所がそろっているかを見る

出典: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」(記載例と、青少年の雇用機会の確保等に関する指針の抜粋) リンク

「月給31.6万円(各種手当含む)」とだけ書かれ、どの手当が何時間分の残業代なのか分からない求人は、3か所がそろっていません。応募前に、転職エージェントか会社に内訳を聞いてください。手当の名前が「業務手当」「職務手当」「現場手当」のように残業と関係なさそうに見えても、中身が固定残業代のことがあります。内定後に受け取る労働条件通知書や雇用契約書で、どの手当が何時間分の残業代かを書面で確かめておくと、入社後の食い違いを防げます。同じリーフレットによると、ハローワークへの「求人票と実際の労働条件が違う」という申出で最も多いのは、固定残業代を含む賃金に関するものでした(平成29年度)。

固定残業代が足りているかを、時間単価で計算する

固定残業代の金額が、書かれた時間数の割増賃金に届いているかは、自分で計算できます。月給の場合、1時間あたりの賃金は「月給÷1か月の所定労働時間」で、月によって所定時間が違うなら1年の平均を使います(労働基準法施行規則19条)。

手順計算(上の例)結果
1. 割増の基礎になる月給を出す基本給240,000円+資格手当16,000円256,000円
2. 月平均の所定労働時間を出す(365日−年間休日125日)×8時間÷12160時間
3. 1時間あたりの賃金256,000円÷160時間1,600円
4. 残業1時間の単価(25%増)1,600円×1.252,000円
5. 30時間分に必要な額2,000円×30時間60,000円

出典: 長野労働局「労働条件ハンドブック」11 割増賃金(通常の労働時間の賃金、割増賃金の基礎となる賃金) リンク。年間休日125日・1日8時間は説明用の例です。

この例は60,000円で30時間分にちょうど足りています。もし同じ給与で「45時間分として60,000円」と書かれていたら、必要な額は2,000円×45時間=90,000円なので、30,000円足りない計算です。

月60時間を超えた分は単価が上がります。上の例で、ある月に時間外労働が70時間あったとします。60時間までは2,000円×60=120,000円、残りの10時間は1,600円×1.5=2,400円の単価で24,000円、合わせて144,000円です。固定残業代の60,000円を引くと、84,000円が追加で支払われる計算になります。

手順1で足す手当に注意してください。割増の基礎から外せるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当(費用に応じて計算するもの)・臨時の賃金・1か月を超える期間ごとの賃金(賞与など)だけです。資格手当や現場手当は外せる一覧に入っていないので、原則として基礎に入ります。外せるかどうかは名称でなく中身で判断されます。

固定残業の時間数は、上限規制の線と並べて読む

固定残業の時間数が何時間なら多いかを示す公的な基準はありません。ただ、法律の線と並べると、その時間数がどういう働き方を前提にしているかが読めます。

固定残業の時間数法律の線との関係面接で確かめたいこと
20〜30時間原則の上限(月45時間)の内側実際の平均残業が設定時間を超えていないか
45時間原則の上限ちょうど45時間を超える月が年に何回あるか
45時間を超える設定毎月その時間まで働くと、年6か月までという特別条項の回数を超える計算実際に毎月その時間まで働くのか、超過分の扱い
60時間を超える部分月60時間を超えた時間外労働は50%以上の割増(2023年4月から中小企業も)60時間超の単価が別に計算されるか

出典: 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 リンク/山口労働局「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%以上で」 リンク

もう一つ見たいのが、固定残業時間と実際の平均残業の差です。上の例(30時間分・60,000円)で、実際の残業が月20時間なら、固定分の60,000円はそのまま支払われます。月40時間なら、超えた10時間分の2,000円×10=20,000円の追加です。面接で「現場配属の人の月平均残業」を聞き、固定残業時間と比べると、毎月追加が出る働き方かどうかが分かります。給与明細に追加の時間外手当が一度も載っていないのに、実際の残業が設定時間を超えている月があるなら、計算を人事に確かめる理由になります。

深夜(22時〜翌5時)に働いた分は、さらに25%以上の割増が付きます。夜間工事の多い土木の現場では、固定残業代に深夜分が含まれているかも確かめてください。時間外労働が深夜に及んだ場合は25%+25%で50%以上、法定休日の労働が深夜に及んだ場合は35%+25%で60%以上になります。上限規制の全体像は残業上限(2024年4月〜)の整理にまとめています。

出典: 長野労働局「労働条件ハンドブック」11 割増賃金(深夜割増賃金) リンク

残業代が出ていないと思ったら確かめること

レバレジーズが2026年3月に施工管理職573人へ聞いた調査では、56.4%が今も「サービス残業をしている」と答えています。自分の残業代が足りているかは、次の順で確かめます。

残業代が足りないと思ったときの手順 1 雇用契約書で、固定残業の時間数と金額を見る 2 実際の残業時間を、毎日の記録で数える 3 時間単価で、必要な額と明細の差を出す 4 人事に確かめ、合わなければ外部へ相談
図: 契約・記録・計算の3つをそろえてから相談する

出典: レバレジーズ「建設業の残業規制に関する実態調査」(2026年3月19日。インターネット調査、施工管理職の正社員573人) リンク/厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 リンク

「所長だから管理職で残業代は出ない」と言われた場合、労働基準法41条の管理監督者に当たるかは肩書でなく実態で判断されます。管理監督者であっても、深夜の割増賃金と年次有給休暇は適用されます。判断に迷うときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、社労士に確かめてください。

残業の申請をしづらい雰囲気で、打刻後に書類を書いている場合も確かめどころです。厚生労働省のガイドラインは、自己申告による労働時間の把握を不適正に運用することが、過重な長時間労働や割増賃金の未払いにつながっていると指摘しています。会社の指示による準備や後片付け、待機の時間も労働時間に当たるとされています。

出典: 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 リンク

転職で給与を比べるときは、月給の総額ではなく、固定残業代を除いた額と時間単価で比べると差が見えます。条件交渉で使う数字のそろえ方は年収を転職で上げる手順で書いています。

月給だけで比べると逆になる例

説明用に、2社を比べます。A社は月給35万円(固定残業代45時間分を含む)、B社は月給31万円(固定残業代なし)で、どちらも月平均の所定労働時間は160時間とします。A社の固定残業代を除いた額を計算すると約25.9万円で、1時間あたりの賃金は約1,620円です。B社は31万円÷160時間で約1,940円になります。

残業が45時間あった月は、A社は35万円のままです。B社は31万円に、1,940円×1.25×45時間で約10.9万円が加わり、約41.9万円になります。月給の見た目はA社が4万円高くても、残業の多い月はB社のほうが約6.9万円多い計算です。求人を比べるときは、固定残業代を除いた額をそろえてから並べてください。

よくある質問

固定残業代の時間より残業が少ない月は、減額されますか。
厚生労働省の記載例では、固定残業代は「時間外労働の有無にかかわらず」支給するものとして書かれています。残業が少ない月も、決められた額が支払われるのが基本です。雇用契約書の書き方を確かめてください。
「みなし残業」と「固定残業代」は同じですか。
求人では、固定残業代のことを「みなし残業」と書く場合があります。ただ、労働基準法には「事業場外みなし労働時間制」という別の制度もあり、こちらは労働時間の数え方の決まりです。求人の「みなし残業」がどちらを指すかは、内訳を聞けば分かります。
休日出勤も固定残業代に含まれますか。
含める場合は、そのことと時間数を明示する必要があります(厚生労働省のリーフレット)。書いていなければ、法定休日の労働は35%以上の割増で別に払われるのが原則です。
固定残業代の会社は避けたほうがよいですか。
3か所がそろって書かれ、時間単価の計算で足りていれば、残業の少ない月も一定額がもらえる形です。避けるかどうかより、実際の残業時間が設定時間に収まっているかを確かめるほうが大事です。

次にやること

  1. 今の雇用契約書と給与明細で、固定残業代の時間数と金額を確かめる。
  2. 割増の基礎になる月給と月平均の所定労働時間から、1時間の残業単価を計算する。
  3. 応募したい求人の給与欄で、基本給・時間数と金額・超過分の追加支払いの3か所がそろっているかを見る。

セコカン転職マップ編集部

施工管理の働き方と転職について、国土交通省・厚生労働省などの公的データと、求人票・試験団体の公表資料をもとに調べて書いています。数字には出典と年度を付けています。