施工管理で月100時間の残業は違法?上限規制の「単月100時間未満」の数え方

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違法です。2024年4月から建設業にも上限規制がかかり、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満にしなければなりません(厚生労働省)。36協定に特別条項があっても同じで、100時間ちょうども上限を超えた扱いです。例外は、災害時の復旧・復興の事業だけです。
「100時間未満」と「80時間以内」は、境目の扱いが違う
上限規制には、似た数字が2つ出てきます。単月は「未満」、複数月の平均は「以内」です。境目ちょうどの時間がどちらに入るかが違います。
| 月の時間(時間外+休日) | 単月100時間未満 | 平均80時間以内 |
|---|---|---|
| 99時間 | 守っている | 平均の計算しだい |
| 100時間ちょうど | 超えている(違反) | 平均の計算しだい |
| 平均がちょうど80.0時間 | — | 守っている |
| 平均が80.1時間 | — | 超えている(違反) |
出典: 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 リンク
99時間台の月があれば、その時点で前後の月を含めた平均を計算し直してください。単月の上限を守っていても、翌月以降の働き方しだいで平均の上限にかかるからです。
2つの上限は、特別条項を使う月だけでなく、1年を通して毎月かかります。長野労働局の資料は「特別条項の有無に関わらず」と書いています。月45時間・年720時間の上限とあわせた全体像は残業上限(2024年4月〜)の整理にまとめました。
規制が始まる前、月100時間以上の残業は珍しいことではありませんでした。ゼネコンなどの職員の労働組合である日建協の2019年11月の調査では、所定外労働が月100時間以上だった組合員は全体で5.8%、外勤の建築で12.4%、外勤の土木で8.4%でした。今は、この働き方そのものが法律違反になります。
36協定の特別条項に「月100時間」と書いてあっても、法律の上限を超える部分は認められません。協定の時間は法律の範囲内で決めるもので、協定があるから100時間まで働かせてよい、という読み方はできない仕組みです。
出典: 日建協「2019時短アンケートの概要」(厚生労働省の会議資料として掲載) リンク
100時間は「時間外労働+休日労働」で数える
月100時間の計算でよくある読み違いは、日曜出勤を外して数えることです。年720時間や月45時間は時間外労働だけで数えますが、単月100時間と平均80時間は、法定休日の労働を足した合計で見ます。
出典: 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」(単月100時間未満・複数月平均80時間以内は休日労働を含む) リンク
ここでいう休日労働は、法定休日(週1日、または4週4日)に働いた時間です。土日休みの会社で日曜を法定休日にしている場合、土曜出勤は休日労働ではなく、週40時間を超えた分が時間外労働になります(長野労働局の資料の例)。どの曜日が法定休日かは就業規則で確かめてください。
100時間に入れる時間は、タイムカードの時間だけとは限りません。厚生労働省のガイドラインは、会社の指示による業務の準備や後片付け、すぐ動けるよう待機している時間も労働時間に当たるとしています。朝礼前のKY活動の準備や、作業終了後の片付けを会社が求めているなら、その時間も足して数えます。
出典: 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 リンク
法定休日と所定休日の見分け方
労働基準法35条の法定休日は、毎週1回(または4週4日)の休日です。土日休みの会社なら、どちらか1日が法定休日で、もう1日は会社が決めた所定休日です。
- 法定休日に働いた時間: 休日労働。35%以上の割増。100時間・80時間の計算に入る
- 所定休日に働いた時間: 週40時間を超えた分が時間外労働。25%以上の割増。月45時間・年720時間の計算にも入る
同じ「休日出勤」でも、どちらの休日かで割増率と数え方が変わります。給与明細で「休日出勤手当」と「時間外手当」がどう分かれているかを見ると、会社がどの日を法定休日にしているかの見当がつきます。
出典: 長野労働局「労働条件ハンドブック」8 休日・11 割増賃金 リンク
2〜6か月平均80時間は「全部の組み合わせ」で確かめる
平均80時間の上限は、ある月を最後にした「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」のすべてが80時間以内であることを求めています。1つでも80時間を超えれば違反です。
この例の9月を最後の月にして、5つの平均を計算すると次のようになります。
| 平均の取り方 | 計算 | 平均 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 2か月(8〜9月) | (90+70)÷2 | 80.0時間 | 以内 |
| 3か月(7〜9月) | (95+90+70)÷3 | 85.0時間 | 超えている |
| 4か月(6〜9月) | (70+95+90+70)÷4 | 81.25時間 | 超えている |
| 5か月(5〜9月) | (65+70+95+90+70)÷5 | 78.0時間 | 以内 |
| 6か月(4〜9月) | (60+65+70+95+90+70)÷6 | 75.0時間 | 以内 |
計算の考え方の出典: 長野労働局「労働条件ハンドブック」10 時間外及び休日労働(当該月とそれ以前の2〜6か月平均がすべて80時間以内であること) リンク
9月は単月で70時間しかなく、2か月平均もちょうど80時間で収まっています。それでも3か月平均と4か月平均が80時間を超えるので、9月の時点で上限を超えた状態です。山の月が2か月続くと、その後の落ち着いた月まで平均が引きずられることが、この計算から分かります。
この例は4月〜9月の6か月とも月45時間を超えています。月45時間を超えられるのは年6か月までなので(こちらは時間外労働だけで数えます)、10月以降も同じ働き方が続けば別の上限にもかかります。
平均80時間で引っかかりやすい形
単月の100時間未満を守っていても、90時間台の月が2か月続くと、その後の2〜4か月の平均が80時間を超えやすくなります。95時間・90時間と続いた例なら、翌月を55時間以下にしないと3か月平均が80時間を超えます。
自分で確かめるなら、表計算ソフトに月ごとの「時間外+休日」を入れ、毎月その月を最後にした5つの平均を出す列を作るのが早い方法です。同じ表に「時間外だけ」の列も作れば、月45時間を超えた回数と年720時間の累計も一緒に追えます。
80時間・100時間の線は、上限規制のほかにも出てくる
「80」と「100」という数字は、健康を守るための別の決まりでも使われています。上限規制と混ぜずに、それぞれの意味を分けて押さえておくと、自分の働き方がどの線に近いかを判断しやすくなります。
| 決まり | 線 | 中身 |
|---|---|---|
| 労働基準法の上限規制 | 単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内 | 超えて働かせると違反(休日労働を含む) |
| 労働安全衛生法の面接指導 | 時間外・休日労働が月80時間超 | 疲れがたまり本人が申し出たら、会社は医師の面接指導を行う |
| 脳・心臓疾患の労災認定基準 | 発症前1か月に約100時間、または2〜6か月平均で月80時間超 | 業務と発症との関連が強いと評価される目安 |
出典: 厚生労働省 労働基準局「管理監督者の労働時間データについて」 リンク/厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」(2021年改正) リンク
労災認定基準は2021年に改正され、この時間に届かなくても、近い時間外労働に加えて休日のない連続勤務や勤務間インターバルの短さなどがあれば、業務との関連が強いと評価できることが明確にされました。月100時間を下回っていれば安全、という線ではありません。
同じ資料では、労働時間以外の負荷として、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、拘束時間の長い勤務などが挙げられています。竣工前に休みなく現場へ出る、夜間作業の翌朝に朝礼から出る、という働き方は、残業の時間数とは別に負担として見られます。
月100時間を超えているときの動き方
今の現場で100時間前後の月が続いているなら、まず記録を残すことから始めます。会社の勤怠記録と、自分のメモの両方があると、相談するときに話が早く進みます。
役に立つ記録は、時刻が機械で残るものです。現場の入退場の記録、事務所の鍵の開け閉めの時刻、業務用PCのログイン・ログオフ、メールやチャットの送信時刻などがあります。手帳やスマートフォンのメモに毎日の始業・終業と休日出勤を書いておくのも、立派な記録です。会社は労働時間の状況の記録を3年間保存する義務があります。
出典: 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 リンク
厚生労働省の総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署の中にあり、労働条件の相談を受け付けています。会社の対応が違法かどうかの判断は、そうした窓口や社労士に確かめてください。
転職を考えるなら、勤怠の仕組みが違う会社を選ばないと、同じ状況を繰り返します。休みが取れない会社の特徴や辞めたいと思ったときに確かめることもあわせて読んでください。
転職先の面接では、昨年度に月80時間を超えた人がいたか、その人に医師の面接指導を案内したかを聞くと、会社の管理の仕方が見えます。「いません」「上限を超えないよう月の途中で調整しています」のように具体的に答えられるかどうかが、勤怠を月ごとに追えているかを判断する材料になります。
よくある質問
- 99時間なら問題ないのですか。
- 単月100時間未満は守っていますが、2〜6か月平均80時間以内も同時に満たす必要があります。99時間の月があると、前後の月しだいで平均の上限を超えやすくなります。
- 管理職扱いでも100時間の上限はかかりますか。
- 労働基準法41条の管理監督者に当たる人には、労働時間の規定が適用されません。ただし管理監督者かどうかは肩書でなく実態で判断されます。また、労働安全衛生法の労働時間の把握は管理監督者も対象です。
- 災害復旧の現場では100時間を超えてもよいのですか。
- 災害時の復旧・復興の事業には、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の規制が適用されません(厚生労働省)。年720時間などの他の上限は残ります。
- 違反した場合の罰則は何ですか。
- 労働基準法119条により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。罰則がかかるのは働かせた側(使用者)です。
次にやること
- 直近6か月の「時間外+法定休日労働」を月ごとに合計し、100時間の線と比べる。
- 最新の月を最後にした2〜6か月平均を計算し、80時間を超える組み合わせがないか見る。
- 超えていれば記録を保存し、社内か総合労働相談コーナーに相談する。
セコカン転職マップ編集部
施工管理の働き方と転職について、国土交通省・厚生労働省などの公的データと、求人票・試験団体の公表資料をもとに調べて書いています。数字には出典と年度を付けています。



