「施工管理技士を取ったら辞めてやる」は得?資格を取る前と後で転職の条件はどう変わる

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1級施工管理技士を取ってから移る方が、応募できる求人も年収交渉の材料も増えます。会社が公共工事の入札で受ける経営事項審査(経審)では、1級の技術職員は1人5点か6点、2級は2点と数えられ、資格がそのまま会社の点数になるからです。ただし、取るまでの時間を今の会社で持ちこたえられるか、受検に要る実務経験の証明を誰に頼むかで、得か損かは変わります。
Xでは「施工管理技士とったら辞めてやる」という声も見かけます。その考えが合う人と、待たずに動いた方がよい人の分かれ目を書きます。
「取ったら辞める」って、本当に得なの?
得になるのは、資格を取るまでの期間が短く、その間の働き方に体と生活が耐えられる場合です。取る前と後で、転職の条件は次のように変わります。
| 比べる所 | 資格を取る前 | 1級を取った後 |
|---|---|---|
| 応募できる求人 | 「2級以上」「取得予定者可」の求人が中心 | 「1級必須」「監理技術者候補」の求人にも応募できる |
| 年収の交渉 | 経験年数と担当した現場で話す | 資格手当と配置の役割も材料になる |
| 会社から見た価値 | 経審の点数は2級なら2点 | 経審で1人5点か6点として数えられる |
| 面接での見られ方 | 受検の予定と勉強の進み具合を聞かれる | 担当した工事の規模と、監理技術者として置けるかを聞かれる |
出典: 国土交通省 中央建設業審議会資料「経営事項審査の審査項目の改正(案)」(2016年) リンク。区分はその後も改正があるので、最新は各地方整備局・都道府県の案内で確かめてください。
逆に、取るまでに何年もかかりそうな人や、今の残業で勉強時間がまったく取れない人は、待つほど損が大きくなります。落ちた年の考え方は施工管理技士に落ちた年に転職するかを考えた記事にまとめています。
資格を取る前と後で変わる3つのこと
1. 現場での置かれ方
1級は、大きな工事で置く監理技術者の要件になる資格です。会社にとっては、1級の人が1人増えると受けられる工事が増えます。求人票に「監理技術者候補」「所長候補」と書かれた求人に応募できるのは、取った後の大きな違いです。
2. 毎月の手当
厚生労働省の就労条件総合調査(令和2年)では、技能手当・技術(資格)手当などを払う企業は全産業で50.8%、支給された人の1人平均は月18.8千円でした。施工管理だけの数字ではありませんが、資格を取っても手当がない会社が半分ほどあることは分かります。今の会社に1級の手当がないなら、取っても給料は変わらないので、取った後に移る理由になります。
出典: 厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」第18表・第19表(令和元年11月分) リンク
3. 交渉の材料
取る前は、経験年数と担当した現場の話が中心になります。取った後は、経審の点数と、監理技術者として置ける人だという事実が加わります。資格手当の相場の調べ方は1級施工管理技士の資格手当の記事、交渉で使う数字のそろえ方は年収アップ転職の手順に書いています。
取るまで待つと損をするのはどんなとき?
令和6年度から受検資格が変わり、1級の第二次検定は「第一次検定に受かった後の実務経験」で受けるしくみになりました。令和3年度以降に1級の第一次検定に受かった人は、合格後5年以上の実務経験(特定実務経験1年以上を含めば3年以上、監理技術者補佐として1年以上でも可)が必要です。令和10年度までは改正前の受検資格でも受けられます。自分がいつ第二次検定を受けられるかを先に数えないと、「取ったら辞める」の「取ったら」が何年先か分かりません。
出典: 一般財団法人 全国建設研修センター「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」 PDF
| こんなときは | 待つより先に動く方がよい理由 |
|---|---|
| 第二次検定を受けられるのが3年以上先 | その間の残業と休みの少なさが、そのまま続く |
| 試験前も休日出勤が続き、勉強できない | 今の会社に残っても合格が遠のく |
| 眠れない・食べられない日が続く | 資格より体の回復が先。医師に相談する |
| 取っても手当も役職も変わらない | 残る理由が資格だけになり、取った後の得が小さい |
待つかどうかを決めるときは、残る期間に失うものを数字にしてみます。たとえば「第二次検定まであと2年、その間の月の残業が60時間」なら、上限規制の原則(月45時間)を毎月15時間超えた働き方が2年続くことになります。その時間を移った先の勉強に回せるなら、先に移ってから取る方が早く受かることもあります。
もう一つ見落としやすいのが、受検の申込みで要る実務経験の証明です。全国建設研修センターの案内では、原則として工事ごとに、工事を請け負った会社の代表者や監理技術者などの証明が要ります。辞めた後に前の会社へ頼むことになるなら、担当した工事の一覧を在職中に控え、証明を誰に頼むかを決めておきます。
逆に、第二次検定を今年か来年に受けられ、今の現場が試験前に落ち着く見込みなら、取ってから移る方が条件の交渉はしやすくなります。どちらに当たるかは、受検できる年と、それまでの工期の予定を並べれば判断できます。
会社が出した受験費用は返さないといけない?
「資格を取ったら辞める」と考えたときに気になるのが、会社が負担した受験料や講習費です。就業規則や資格取得支援の規程に「取得後〇年以内に辞めたら返す」と書かれている会社があります。
労働基準法第16条は、働く人が辞めたときなどの違約金や損害賠償の額を前もって決める契約を禁じています。費用の返還の決まりがこれに当たるかは、費用が貸付けの形か、本人の自由に任された受検か、返す額や期間が妥当かなどで判断が分かれます。自分の場合がどうなるかは、労働基準監督署か社労士に相談してください。
出典: e-Gov法令検索「労働基準法」第16条 リンク
相談の前に、次の3つを手元にそろえると話が早く進みます。
- 資格取得支援の規程や、受検前に署名した書類の写し
- 会社が払った費用の内訳(受験料・講習費・教材費)
- 受検が会社の指示だったか、自分で申し出たかが分かるメールや記録
返還の規定がある会社でも、辞める時期を規定の年数の後にずらせるなら、それで解決することもあります。合格発表から規定の期限までの月数を数え、その間に第二次検定の結果や次の会社の内定を待つ時間と重ねられないかを考えます。お金の話は感情的になりやすいので、口頭ではなく規程の写しを見ながら総務の担当と話すと、話がこじれにくくなります。
取った後に辞めるときの順番
資格を取った後に移ると決めたら、合格発表から退職までを次の順に進めます。現場代理人や監理技術者として名前が出ている人は、工期の区切りを見て伝える時期を決めます。
内定の書面を受け取る前に退職を伝えると、条件が変わったときに戻る場所がなくなります。退職の伝え方と申し出の期限は施工管理を辞めたいと思ったときの記事に、名前が出ている現場から抜ける段取りは現場代理人だとすぐ辞められないかを書いた記事にまとめています。
資格の種類と等級ごとに求人を探せる転職相談を使うと、1級を持った後に応募できる求人の数と手当の幅を、在職中に確かめられます。
よくある質問
- 資格を取ってすぐ辞めたら、会社に恨まれませんか?
- 辞める時期を選ぶ自由は働く人にあります。気まずさを減らしたいなら、工期の区切りに合わせて伝え、引き継ぎの書類を残すことです。辞め方が丁寧なら、受検に要る実務経験の証明なども頼みやすくなります。
- 2級を取った段階で転職しても意味ありますか?
- 意味はあります。2級があれば主任技術者として置ける工事の幅が広がり、「2級以上」の求人に応募できます。1級の受検を続けられる会社を選べば、移った後に1級を取る道も残ります。
- 1級を取ったら、年収はどれくらい上がりますか?
- 会社の手当の規定と、任される役割で変わるので、一律の額は言えません。厚生労働省の就労条件総合調査(令和2年)では、技術(資格)手当などを支給された人の1人平均は月18.8千円(全産業)です。応募先の求人票で、1級の手当の額と、監理技術者として置かれるかを確かめてください。
- 会社のお金で受けた資格でも、転職先で使えますか?
- 施工管理技士の資格は本人に与えられるものなので、会社を移っても資格は残ります。費用の返還を求める規定がある場合は、上の章のとおり、規程の写しをそろえて労働基準監督署か社労士に相談してください。
次にやること
- 自分が第二次検定をいつ受けられるかを、受検資格の表で数えて書き出す
- 今の会社の資格手当と、資格取得支援の返還の規定を就業規則で確かめる
- 担当した工事の一覧(工事名・期間・立場・請負金額)を在職中に作っておく
セコカン転職マップ編集部
施工管理の働き方と転職について、国土交通省・厚生労働省などの公的データと、求人票・試験団体の公表資料をもとに調べて書いています。数字には出典と年度を付けています。



