「工程優先で」と危険を流された施工管理へ 伝えた主任だけ責められた時の守り方

この記事には広告(PR)が含まれることがあります。掲載している数字・内容は、広告の有無に関係なく公的データや公表資料をもとにしています。
危険を伝えたのに「工程優先で」と流され、後から自分だけが責められたなら、まず伝えた事実を文面で残し直してください。口頭の指摘は、何か起きたあとで「聞いていない」とされやすく、指摘した側が説明を求められる形になりがちです。日時・場所・誰に何を伝えたかをメールやチャットで送っておけば、次に同じことが起きたときの材料になります。会社の中で止まる場合は、労働基準監督署などの外の窓口に相談する道もあります(労働安全衛生法第97条)。
危険を伝えたのに責められるのは、自分の伝え方が悪かった?
Xでは、仮設の危険を副所長に何度も伝えたのに「工程優先で。なんとかなるやろ」と返され、所長に記録を見せたら主任の自分が責められた、という投稿も見かけます。
危険に気づいて上に伝えるのは、施工管理として当たり前の動きです。足場の手すりが外れたまま、開口部の養生がずれている、作業手順書と実際の段取りが違う。こうした気づきを朝礼や工程会議の前に上げるのは、安全管理の仕事そのものです。
責められるとき、理由にされるのは中身より「順番」や「場」であることが目立ちます。なぜ所長に直接持っていったのか。副所長の顔をつぶした。今言うことか。どれも、その足場が危ないかどうかとは別の話です。
危険があるかどうかと、社内の根回しがうまかったかどうか。この2つは分けて受け止めてください。前者を上げたことを、自分で責める必要はありません。
そのうえで、次に同じ目にあわないために見直せる所が1つあります。指摘が口頭だけで終わっていなかったか、です。
口頭で終わった指摘は、あとから残らない
現場での危険の指摘は、たいてい口頭です。巡回中にすれ違いざまに言う、詰所で一言かける。これだと、言った側にも言われた側にも記録が残りません。
あとで「聞いていた」「聞いていない」の言い合いになると、立場の弱い側が不利になります。主任が副所長に伝えた場合なら、不利になるのは主任のほうです。伝え方ごとに、何が残るかを比べました。
| 伝え方 | 残るもの | あとで確かめられるか |
|---|---|---|
| すれ違いざまに口頭で | なし | 本人同士の記憶だけ |
| 朝礼・KY(危険予知)で発言 | KY記録に書かれれば残る | 書かれていなければ残らない |
| 工程会議で発言 | 議事録に載れば残る | 議事録を自分で確かめておく |
| 口頭のあと、メール・チャットで送る | 日時・相手・文面 | 送信履歴で確かめられる |
| 写真をつけて文面で上げる | 場所・状態・日時 | 第三者にも見せられる |
表の下2つにするだけで、「言った・言わない」から抜け出せます。長い文章は要りません。
送る文面の例
「本日10時の巡回で、3階東側の足場に手すりの外れが2か所ありました(写真添付)。工程上の判断はお任せしますが、作業開始前の手直しをお願いしたく共有します。」
相手を責める言葉は入れません。「危ないと何度も言いましたよね」と書くと、記録ではなく抗議に見えてしまいます。書くのは、見たこと・場所・写真・お願いしたいことの4つだけです。
手元の記録は、送ったメールと写真を日付順にフォルダへ入れておくだけで足ります。工事写真と同じで、あとから並べて見せられる形にしておくのが目的です。
危険を伝える時は「口頭→文面→上の人」の順で残す
記録を残すときは、順番も決めておきます。順番を飛ばすと、中身ではなく「飛ばしたこと」を責められる余地が生まれます。
1と2. 口頭のあと、その日のうちに文面へ
口頭で伝えるのは、相手に考える時間を渡すためです。いきなり文面で送ると、身構えられることがあります。ただし口頭だけで終えず、同じ日に「先ほどの件、念のため共有します」と写真つきで送ります。
3. 所長に上げるときは、上司を飛ばさない
副所長が動かないとき、所長に上げるのは筋の通った動きです。それでも、副所長に黙って持っていくと「頭越し」と受け取られます。「直っていないので、所長にも共有します」と副所長に一言伝え、メールなら副所長をCCに入れておきます。上げる相手を増やすときも、文面で残すのが基本です。
元請の現場で一定の規模がある場合は、統括安全衛生責任者(下請を含めた現場全体の安全をまとめる人)や、本社の安全担当部署もあります。所長で止まるときの次の宛先として、名前を確かめておくと迷いません。
所長が強く押し切ってくる現場での受け止め方は所長のゴリ押しがつらい施工管理へでも整理しています。
「なんとかなるやろ」が通らない理由は、数字にも出ている
工期が詰まると、多少の危険は見逃す空気が生まれます。けれども、建設現場の事故は今も少なくありません。
厚生労働省が2025年5月に公表した「令和6年の労働災害発生状況」では、労働災害による死亡者(新型コロナウイルス感染症によるものを除く)は全産業で746人と過去最少でした。その中で建設業の死亡者は232人で、前年より9人増えています。事故の型で最も多かったのは「墜落・転落」の188人(全産業)でした。
足場の手すりや開口部の養生は、まさにこの墜落・転落を防ぐための備えです。仮設の危険を指摘するのは、工程を止めたいからではなく、この数字の1人に職人さんを入れないためです。そこは引け目を感じる所ではありません。
出典: 厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」(2025年5月30日) リンク
会社の中で止まったら、外に相談していい?
相談して構いません。労働安全衛生法第97条では、働く人は、事業場に法律や命令の規定に違反する事実があるとき、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官に申告して、是正を求めることができるとされています。
同じ条の2項では、事業者は申告をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。
ただし、目の前の状態が「法令違反にあたるか」、責められたことや評価・異動が「不利益な取扱いにあたるか」は、場面ごとの判断になります。ここは言い切れません。自分で決めつけず、労働基準監督署や社労士に、記録を持って相談してください。どこに行けばよいか分からないときは、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーが入口になります。
| 困っていること | 相談先 |
|---|---|
| 現場の危険が直らない・法令違反が疑われる | 労働基準監督署 |
| 指摘したことで評価を下げられた・外された | 総合労働相談コーナー、労働基準監督署、社労士 |
| どこに相談すればよいか分からない | 各都道府県労働局の総合労働相談コーナー |
| 眠れない・現場に行くのがこわい | 医師(心療内科など) |
出典: e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第97条 リンク
責められた日から、朝に現場が近づくと胸が苦しい、夜中に目が覚める、という状態が続くなら、まず医師に相談してください。休むかどうかも、医師の意見を聞いてから決めるほうが後悔が少なくなります。眠れない夜のことは夜中に現場のことで目が覚めて眠れない施工管理へにまとめています。
残る・社内異動・辞める、どれを選べばいい?
一度責められたからといって、すぐ辞める必要はありません。かといって、同じ副所長の下で同じことが続くなら、我慢を続ける理由も薄くなります。3つの道を並べると、確かめることが見えてきます。
| 選ぶ道 | 向いている状況 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 今の現場に残る | 所長や安全担当が記録を受け止めてくれた | 指摘した危険が実際に直ったか |
| 社内で別の現場へ | 問題が今の現場の上司に限られる | 異動の希望を出せる時期と相手 |
| 会社を変える | 本社に上げても「工程優先」で終わる | 安全担当の部署と、指摘の扱い方 |
会社を変える場合、見るべきは年収や休みだけではありません。安全の指摘をどう扱う会社かも、面接で聞けます。
- 安全パトロールは誰が、どのくらいの間隔で回っているか
- ヒヤリハットを報告したあと、どう扱われるか
- 現場で危険を見つけたとき、工程と安全のどちらを誰が判断するか
答えが具体的な会社ほど、指摘した人を一人にしない仕組みがあります。面接で「前の会社で安全の指摘が通らなかった」とそのまま話すより、「安全の判断を仕組みで回せる職場で、施工管理を続けたい」と、続けたいことを軸に話すほうが伝わります。経験を積んだ安全管理の目は、会社を移っても持ち運べます。
施工管理の経験者向けの求人には、建設業に特化した転職相談で、安全管理の体制まで含めて聞いてみる方法もあります。
よくある質問
- 所長に直接言ったら、副所長を飛ばしたって怒られました。自分が悪いんですか?
- 危険を上げたこと自体は悪くありません。ただ、頭越しと受け取られると中身の話にならないので、次からは副所長に「所長にも共有します」と一言伝え、メールならCCに入れてから上げると、責められる余地が減ります。
- 危ないって何回も言ったのに、記録がないです。今からでも残せますか?
- 残せます。今日の時点で見える状態を写真に撮り、「以前お伝えした件、まだ直っていないので改めて共有します」と文面で送ってください。過去に口頭で伝えた日時は、思い出せる範囲で自分用のメモにまとめておきます。
- 監督署に相談したら、会社にばれて居づらくなりませんか?
- 労働安全衛生法第97条では、申告を理由にした不利益な取扱いを禁じています。ただ、どこまで守られるかは場面ごとの判断になるので、相談の前に、監督署や社労士にその不安もそのまま聞いてください。
- 安全のことで揉めたのが理由で転職しても、面接で不利になりませんか?
- 理由としては成り立ちます。前の会社を責める話にせず、安全の判断を仕組みで回せる職場で働きたい、と続けたいことを中心に話すと伝わりやすくなります。辞める前に確かめることは施工管理を辞めたいと思ったらにまとめています。
次にやること
- 今日見えている危険を写真に撮り、日時・場所・お願いしたいことを書いて上司に文面で送る
- 所長・統括安全衛生責任者・本社の安全担当の名前と連絡先を確かめておく
- 社内で止まったら、記録を持って労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談し、合わせて安全管理の体制がある会社の求人を見比べる
セコカン転職マップ編集部
施工管理の働き方と転職について、国土交通省・厚生労働省などの公的データと、求人票・試験団体の公表資料をもとに調べて書いています。数字には出典と年度を付けています。



